美濃焼の器展
今から約50〜60年前、海外輸出用に岐阜県多治見市、土岐市、瑞浪市、可児市で作られていた器たちの展示販売をいたします。
薄暗い倉庫、トタンの隙間からこぼれ落ちる光。
うず高く積み上げられた林檎箱。
ゆるやかに照らし出される灰色の食器。
多治見の古い倉庫の横に住むおばあさんは84歳。
管理人というには管理をしていない倉庫で昔話を聞いた。
彼女が20歳で嫁入りした時から積み上げられていた食器もあるそうだ。
その頃は戦後から復興し、神の名前が付けられるほどの好景気の始まり。
日本製がもてはやされ、アメリカやヨーロッパへと輸出されていた食器たち。
作れば売れた時代。
積み上げられた箱たちが当時の華やかな時代の余韻でもあり、
今となっては忘れ去られた歴史の積層である。
時代は移ろい、行き先を失った夥しい数の食器たちが
埃を被り、静かに眠るように待っている。
当時の職人たちの想いが
もう一度照らされた光で、誰かのもとへ届くことを願って。