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大谷哲也さん - interview -

土着的なものを引き算して、
さまざまな属性から切り離した世界を目指したい






天平時代から続く長い信楽焼の歴史のなかで、新しい白磁の世界を模索する陶芸家の大谷哲也さん。

大谷さんにとって陶芸とは、日々の暮らしからふと生まれ、膨大な過去のアーカイブから必要なものをすくい取り、再編集していくもの。

時代とともに移りゆく伝統や文化に潜む「土着性」を消しながら、属性から切り離されたものに仕上げていく。

現代の暮らしに寄り添う大谷さんの器には、美しさと実用性の他に、どこか余白が漂います。今回、CASICAでプランターの個展を開催する大谷さんに、新たな物づくりに対する気持ち、そしてこれからのことを伺いました。





―現在、国内のみならず、国外でも高く評価されている大谷さんですが、陶芸の道に進まれた経緯を教えてください


建築や自動車のデザインに関わる仕事に就きたくて大学に進みましたが、ペンと定規で図面を引くことがどうも苦手で。建築へ進むことを断念し、デザインを学ぶことにしました。その授業で初めて粘土とろくろに触れたのですが、自分はこういう感覚的なことが好きなんだと気付いたんです。





―そこから陶芸家になることを意識されたのでしょうか?


いえ、当時はこれっぽっちも。大学を卒業してふらふらしていたら、大学の方が信楽窯業試験場の職員の仕事を勧めてくれて。そこで、デザイン科の研修生や産地の陶器屋さんに向けて製品開発や石膏型の作り方を指導する仕事に就きました。研修生のほとんどは、自分と同じ年代。将来に向けて学ぶ姿がとても眩しくて。また同時に桃さんの両親やそのお友達、すでに独立して自分の作品を作っている知人の、生活と仕事が一体化する「ものを作る人の暮らし」が、とても素敵に思えたんです。なりたい自分になれずに悶々としていた僕ですが、このとき、陶芸家になる目標ができました。朝練と称して、出勤前にろくろの練習に取り組みました。





―その後、12年勤めた窯業試験場を退職して「大谷製陶所」を開窯した大谷さん。ものづくりの糸口は、日々の暮らしのなかにあると言います。


キッチンに立って料理をしているとき、ふと「こういう器がほしい」と思うことがあります。最近はレストランで食事をしていると「ここは、こんな風になっていたら素敵だなぁ」と考えることも多くて。

「古典や古物の写し」を否定するわけではありませんが、僕は今の暮らしにマッチした器を作りたい。日本人の食生活はここ100年で大きく変化しました。海外から日本に入ってきた料理は、日本で手に入りやすい材料に置き換えられ、こちらの食卓に合ったものへ再編集され「日本食」へと変化します。それに合わせて料理を盛り付ける食器にも変化が必要だと思います。





―それは料理をされている人だからこそ、見える世界ですね。


そうですね、料理をしていると見えてくることも多々あります。世界中のものや情報が簡単に手に入る現代では、多様化と同時に平均化が進んでいると思います。僕は、この「平均化」が「無国籍化」と地続きのような気がして。自分のものづくりにおいて、これらが非常に興味深いんですよ。





―無国籍化ですか。しかし、大谷さんの作品は「日本」をあまり感じさせないように思います。


今、ものに宿る「土着性」に関心があって、それをうまくコントロールしていくことに挑戦したい。 決して“昔ながら”のものだけが、美しいとは思わないし、新しいものだけが素晴らしいとも思わない。パリの寿司屋やニューヨークの日本料理店では日本の伝統的な器を使ってもらえると思いますが、パリのフランス料理店や上海の中華料理店では、日本的すぎて難しい。同様に、日本の割烹料理店でも洋食器や中華料理の器はあまり使わないですよね。





―そういった背景があるなか、大谷さんが目指すものは何でしょうか?


目指すのは、日本の割烹料理店でも、フランスのフランス料理店でも使えるもの。器から土着的な物語を引いた先にあるデザインです。とはいえ、徹底的に「属性がないもの」を目指すわけではありません。手から生まれたものにはどんなに手跡を消しても温もりが残りますし、ワビ・サビ的なものを消しても海外では「日本っぽい」と言われます。そういうどうやっても消せないものを、ほんの小さな音で発していく、というのが僕の白磁の作品のコンセプトです。



―初めから海外を視野に入れて物づくりをされていたのでしょうか?


はい、漠然とですが、ずっと海外で仕事をしたいと思っていました。
スタッフの手が増えたら、現在取り組んでいるより大きな海外のレストランやホテルの仕事も引き受けたいと考えています。また、白磁以外の作品も制作したいと思っています。昔から建築が好きだったこともあって、タイルや照明など建築に関わるものも手がけたいですね。





―手が増えたらとのことですが、現在お弟子さんは?


今は3人います。将来的には5人まで受け入れ可能にするために工房を増築中です。僕たちが陶芸という仕事に取り組んでいて「楽しい。幸せ」と感じることを、彼らにも共有してあげたい。だからこそ、技術を身につける以外にも、写真の撮り方やウェブサイトの作り方など、セルフプロデュースの方法や、日々の食事や畑などの暮らしのことを伝える時間も設けています。彼らには3年の研修期間を経て職人として2年働いてもらい、5年で独立できるように、計画的にサポートしています。


「なぜ弟子をとるのか?」と聞かれたら、きっとそれは伝えたいことが自分たちには山ほどあるからでしょうね。ときどき、今の信楽の子供たちの中に大人になったら「陶芸を生業にしたい」という人が一体どれほどいるのだろう?と考えます。少なからず身内や周辺の大人が陶器の仕事に関わる陶器産地の町ですが、決してそう多くはないと思います。だから、陶芸家になりたいと憧れる子供たちが増えるように、その魅力を伝えられる場も増やしたいですね。





―今回、食器ではなくプランターづくりに挑戦されましたが、そのきっかけを教えてください。


数年前から作っては多肉植物を植えていたのですが、なんとなく冬場にほったらかしにしていたらダメになってしまって。その後、ホームセンターの見切り品コーナーでボサボサに茂った観葉植物の寄せ植えをふと見つけて、この子たち連れて帰ろうと思ったんです。自分で作った鉢に植え付けて、昼休みに割とこまめに世話をしていると、それなりに育って、だんだん可愛くなってきて。


花器や植木鉢は普段使いの食器では、まず作らない形を作れるのも魅力の一つです。家で使っているものは、植物を用意してからそれに合わせて鉢を作っています。スケッチを描いて、あれこれ考えながらろくろをひき、窯から出てきたら植え付けするのが楽しくて。
切り花の投げ入れやアレンジよりも、鉢植えの剪定くらいの緩いスピード感が僕には合っているのかもしれません。





―最後に、今回の個展について。


コツコツと自宅用に作ってきた植木鉢をそろそろ皆さんにお披露目したいと思っていた頃にCASICAを訪れ、こちらの植物コーナーに自分の作品を並べたら、そこの植物からもらうエネルギーやインスピレーションできっと相乗効果が生まれると感じ今回の展示会を企画していただきました。この場所で個展を開けば、面白いことが起こる予感があります。




text by Tokiko Nitta




大谷哲也

1971年神戸市生まれ。工学系大学のデザイン科を卒業後、「滋賀県立信楽窯試験場」勤務を経て、2008年に「大谷製陶所」を設立。暮らしに寄り添う土鍋として製作された自由度の高いシンプルな「平鍋」は大谷さんの代表作に。シンプルを極めたニュートラルなフォルムに、静謐で柔らかみのある白色が合わさり、手仕事ながらも精密な作品には世界中にファンがいる。

 


🔳個展のお知らせ

大谷哲也「POTTERY FOR GREEN」
2023.9.5 TUE - 9.18 MON
(close:9.11 MON / 9.12 TUE)


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